01:移動ルートがつながった

「あっ……つながる……」
大阪発の上海行きフェリーを予約したときに気がついた。
事の発端は平成最後のゴールデンウィークだ。ただでさえ航空券の高い時期なうえ、天皇の代替わりで10連休になってしまい、「アメリカ往復が100万円」というチケットもあらわれるほど、例年よりもさらに割高になっていた。
なんとかして国外脱出できないものかと、スカイスキャナーで調べていると、連休明けのバンコクから成田へ飛ぶスクートで4860バーツ(約1万7000円)というのを発見した。ということは、それまでにバンコクまでたどりつける国外脱出ルートを探せば良い。そこで思いついたのが海路だ。大阪から上海へフェリーが出ていたはず。
調べて見ると、蘇州号が連休スタート前日に大阪から出ている。問い合わせてみると、空席ありとのこと。しかも運賃はゴールデンウィークによる値上げもないようで、燃油サーチャージなども込みで片道2万3000円。大阪までの飛行機は朝イチの便で1万1050円。この時点でトータル約5万1000円だ。ゴールデンウィーク前日から翌日のスケジュールで東京とバンコクの往復チケットを探すと7万円台半ばからだったので、これなら安い。あとは上海からバンコクまで移動すればいいわけで、海外にゴールデンウィークは関係ないので、移動の費用もそんなにかからないはず。

 そんな経緯でゴールデンウィークの旅程を予約したのだが、大阪から上海へフェリーでの移動ルートを頭で思い描いたとき、自分がいままでこなしてきたルートとつながることに気がついたのだ 。

ウェブ媒体の記事にしたり、それをまとめてKindleで販売したりもしているが、以前ポルトガルの最西端からロシアの最東端駅まで行って、そのままウラジオストックからフェリーで韓国を経由して日本に戻ってくる陸海ルートを経験している。さらに香港からシンガポールまでバスを使っての陸上移動もした。

 上海から香港は逆ルートだが、数年前寝台列車で移動している。ということは、今回の大阪から上海の海上ルートをこなせば、ポルトガルの最西端から北回りで日本を経由して、シンガポールまでは飛行機を使わずに移動したルートがつながるのだ。

 ポルトガルからシンガポールまでつながるのがわかると感慨もひとしおだが、そうなると心の中の悪い虫が動き始める。「南回りでヨーロッパまで帰れないか?」と……。
 南回りの陸路でヨーロッパを目指す。わりとありがちな話ではある。古くはバックパッカーのバイブルとなった「深夜特急」やそれをもとに企画された電波少年での猿岩石の旅。下川裕治氏も何回かやっているはずだ。とはいえ好奇心をくすぐられるルートではあるし、なにより地図に引いたラインをみたら、ぐるっとつなげられずにはいられなくなった。
 北回りのようにシベリア鉄道で一気に移動というわけにはいかないので、何度か細切れにやっていくしかないが、ルートを調べているだけでもワクワクしてくる。多分数年はかかるがチャレンジしてみることにした。

 なにはともあれ、大阪から上海へのフェリーである。自宅から始発電車で羽田空港に向かい、伊丹空港まで飛行機で飛ぶ。シベリア鉄道ルートのときは、鳥取からサンライズ号で横浜まで戻っており大阪も経由している。なので今回の旅も大阪駅からスタートすれば一応はルートとしてつながったことになる。

 大阪駅から環状線などを乗り継いで、コスモスクエア駅まで行き、そこから船の入港日のみ運行しているバスに乗ってフェリーターミナルへ。せっかくの大阪なのでなにか名物的なものでも食べようかと思ったものの、10時半までに乗船手続きをせねばならず、途中駅のコンビニで買いだし程度の時間しかなかった。

 フェリーターミナルに到着すると、建物の向こうに停泊している蘇州号が見える。ターミナル内に入ると、すでに多くの乗船客で賑わっていた。耳に入ってくる言葉はほとんど中国語だった。

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